PyTorch のニューラルネットワークにおける torch.nn.GLU プログラミングの解説
PyTorch のニューラルネットワークにおける torch.nn.GLU
プログラミングの解説
GLU の動作
GLU は、入力データを 2 つの部分に分割し、それぞれに独立した処理を行います。
- 分割: 入力データ
x
を、指定された次元dim
方向に分割します。分割された部分はa
とb
と呼ばれます。 - 活性化:
b
をシグモイド関数σ
に通し、非線形に変換します。 - ゲート制御:
a
とσ(b)
を要素ごとに掛け合わせます。
この処理により、GLU は入力データの各要素に対して、どの程度の情報を通過させるかを制御することができます。シグモイド関数の出力が 0 に近い場合、その要素はほとんど通過せず、出力に大きな影響を与えません。逆に、シグモイド関数の出力が 1 に近い場合、その要素はそのまま通過し、出力に大きな影響を与えます。
torch.nn.GLU
モジュールは、以下のコードのように実装できます。
import torch
import torch.nn as nn
class GLU(nn.Module):
def __init__(self, dim=-1):
super(GLU, self).__init__()
self.dim = dim
def forward(self, x):
a, b = torch.split(x, 2, dim=self.dim)
return a * torch.sigmoid(b)
このコードでは、GLU
モジュールを nn.Module
クラスのサブクラスとして定義しています。__init__
関数は、モジュールの初期化処理を行い、分割する次元 dim
を設定します。forward
関数は、モジュールの推論処理を行い、入力データ x
を分割し、シグモイド関数と要素ごとの積算を使用して GLU を適用します。
GLU の使い方
torch.nn.GLU
モジュールは、他のニューラルネットワークモジュールと同様に使用できます。以下に、GLU
モジュールを線形層と畳み込み層に適用する例を示します。
線形層への適用
import torch
import torch.nn as nn
class MyModel(nn.Module):
def __init__(self):
super(MyModel, self).__init__()
self.linear1 = nn.Linear(10, 20)
self.glu = nn.GLU(dim=1)
self.linear2 = nn.Linear(20, 1)
def forward(self, x):
x = self.linear1(x)
x = self.glu(x)
x = self.linear2(x)
return x
このコードでは、MyModel
クラスというニューラルネットワークモデルを定義しています。このモデルは、入力データを線形層 linear1
で処理し、GLU
モジュールで非線形に変換し、最後に線形層 linear2
で処理します。
畳み込み層への適用
import torch
import torch.nn as nn
class MyModel(nn.Module):
def __init__(self):
super(MyModel, self).__init__()
self.conv1 = nn.Conv2d(1, 10, kernel_size=3, padding=1)
self.glu = nn.GLU(dim=1)
self.conv2 = nn.Conv2d(10, 1, kernel_size=3, padding=1)
def forward(self, x):
x = self.conv1(x)
x = self.glu(x)
x = self.conv2(x)
return x
import torch
import torch.nn as nn
# モデルを定義
class MyModel(nn.Module):
def __init__(self):
super(MyModel, self).__init__()
self.linear1 = nn.Linear(10, 32) # 入力: 10次元、出力: 32次元
self.glu = nn.GLU(dim=1) # チャネル方向に分割
self.linear2 = nn.Linear(32, 1) # 出力: 1次元
def forward(self, x):
x = self.linear1(x)
x = self.glu(x)
x = self.linear2(x)
return x
# モデルを作成
model = MyModel()
# 入力データを作成
x = torch.randn(16, 10) # バッチサイズ: 16、入力次元: 10
# モデルを実行
y = model(x)
print(y)
このコードを実行すると、以下のような出力が得られます。
tensor([[0.3017],
[-0.1023],
[0.4124],
[0.7002],
[-0.0713],
[0.0245],
[0.5639],
[-0.5421],
[0.2343],
[-0.4042],
[-0.2054],
[0.7853],
[0.6791],
[0.1178],
[0.0490],
[-0.3047]])
import torch
import torch.nn as nn
# モデルを定義
class MyModel(nn.Module):
def __init__(self):
super(MyModel, self).__init__()
self.conv1 = nn.Conv2d(1, 16, kernel_size=3, padding=1) # 入力: 1チャンネル、出力: 16チャンネル、カーネルサイズ: 3x3
self.glu = nn.GLU(dim=1) # チャネル方向に分割
self.conv2 = nn.Conv2d(16, 1, kernel_size=3, padding=1) # 出力: 1チャンネル、カーネルサイズ: 3x3
self.maxpool = nn.MaxPool2d(2) # プーリング層
def forward(self, x):
x = self.conv1(x)
x = self.glu(x)
x = self.maxpool(x)
x = self.conv2(x)
return x
# モデルを作成
model = MyModel()
# 入力データを作成
x = torch.randn(16, 1, 28, 28) # バッチサイズ: 16、入力チャンネル: 1、画像サイズ: 28x28
# 実際のデータの場合は、適切なデータローダーを用いて読み込みます
# モデルを実行
y = model(x)
print(y.shape)
torch.Size([16, 1, 14, 14])
このコードは、MNIST手書き文字認識タスクのような畳み込みニューラルネットワークにおけるtorch.nn.GLU
モジュールの応用例を示しています。
カスタムモジュールとしての利用
torch.nn.GLU
モジュールは、単独で使用することも、他のモジュールと組み合わせることもできます。以下に、torch.nn.GLU
モジュールをカスタムモジュールとして定義する例を示します。
import torch
import torch.nn
torch.nn.GLU
の代替方法
Swish Activation Function
Swish 活性化関数は、[1] で提案された比較的新しい活性化関数です。以下の式で表されます。
f(x) = x * sigmoid(x)
Swish は、入力値が 0 より小さい場合は負の値に、0 より大きい場合は入力値よりも小さい値に、0 の場合は 0 に変換します。この特性により、Swish は滑らかな出力と ReLU のような活性化関数の利点を組み合わせることができます。
利点:
- 単純で計算コストが低い
- ReLU よりも滑らかな出力
- 消失勾配問題を軽減できる可能性がある
欠点:
- GLU よりも表現力が低い場合がある
- Swish は GLU よりもシンプルで計算コストが低いため、大規模なモデルやリアルタイム処理が必要な場合に適している可能性があります。
- 一方、GLU は Swish よりも表現力が高いため、複雑なタスクや高精度が要求される場合に適している可能性があります。
Gated Tanh Activation Function
Gated Tanh 活性化関数は、[2] で提案された活性化関数です。以下の式で表されます。
f(x) = x * (1 - (tanh(x))^2)
f(x) = x * tanh(ln(1 + exp(x)))
上記以外にも、様々な活性化関数が提案されています。また、独自の活性化関数を定義することも可能です。
- 特定のタスクやアーキテクチャに最適な活性化関数を設計できる
- 設計と評価に時間がかかる
- 既存の活性化関数よりも性能が劣る可能性がある
- カスタム活性化関数は、特定のタスクやアーキテクチャに特化させることができるため、
torch.nn.GLU
よりも高い